卒業はした。でも、まだ就職が決まっていない。内定が出なかった、辞退した、留学や試験で就活の時期を外した。理由は人それぞれでも、「既卒の就活は厳しい」と聞いて検索したはずです。
「既卒は不利」「卒業後3年以内なら新卒扱いになる」。正反対の話が両方出てきます。どちらを信じればいいのでしょうか。
僕はいまも人を採る側にいます。経営者として8年、採用の最終決裁をしてきました。その前に事業会社で採用担当を2年。既卒の応募も、中途枠で実際に読んで判断しています。面接した人数は、覚えていないけれど500人くらい。
採る側から書きます。厳しいのは本当です。厳しい場所が、能力とは別のところにあるだけで。
※ 統計は厚生労働省の公表資料、法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月12日に確認しました。実務の記述は僕が関わってきた採用のものです。
既卒が厳しい本当の理由は、能力より「枠」
採る側は、採用を「枠」で考えます。多くの会社が持っている枠は2つだけ。新卒枠と中途枠です。
- 新卒枠 — 卒業見込みの学生が対象。募集時期・選考の流れ・入社日が1年周期で固定されている
- 中途枠 — 欠員の補充と増員。「社会人経験◯年」のように、経験を前提に要件を書く
既卒は、どちらの想定にも入っていません。新卒枠は「◯年3月卒業見込み」で締まっていて、中途枠は経験を求めている。落とされる前に、入口が無い。これが「既卒は厳しい」の正体だと思っています。
会社が既卒を嫌っている、という話とも違います。既卒が来ることを想定して枠を組んでいないだけ。想定していないから応募資格に書かれない。書かれないから、応募できるのかどうかも分からない。厳しさの中身は、能力の評価より手前にある「入口の少なさ」です。
同じ壁に、一度就職してから辞めた第二新卒もぶつかります。そちら側から見た枠の話は【枠の外から入る】第二新卒の転職が厳しいのは誰のせいかに書きました。
既卒は少数派。だから枠が用意されない
なぜ会社は既卒の枠を作らないのか。数字を見ると分かります。
大学を出た人の86.7%が、卒業後1年の間に正社員として働いていた。裏返すと、卒業して1年の時点で正社員になっていない人は少数派です。働いていなかった人は2.1%しかいません。
採る側の立場で言うと、この数字がそのまま枠の設計になります。多数派に合わせて枠を作るほうが、採用の手間が少ない。新卒枠は卒業見込みの学生向け、中途枠は経験者向け。少数派の既卒のために3つめの枠を作る会社は多くありません。
あなたが劣っているから枠が無いのでしょうか?違います。少数派だから、枠を作る会社が少ない。それだけです。ここの順番を間違えると、自分を責める方向に進んでしまう。
新卒枠に戻れる指針と、その限界
枠が無い既卒のために、国が用意したのがこの指針です。
読んでほしいのは「努めること」の部分。努力義務です。義務とは違うので、受け付ける会社と受け付けない会社に分かれます。僕の会社は既卒を中途枠に回しています。
ではどうやって見分けるか。新卒採用ページの応募資格の欄を読むしかありません。「卒業後3年以内の方を含む」「既卒可」と書いてあれば応募できる。「◯年3月卒業見込みの方」だけなら対象外。求人票のどこに線があるかは【線を引くのは会社】第二新卒はいつまでに書いています。
もう1つ、指針が触れていない限界があります。新卒枠は1年に1回しか動かない。既卒が新卒枠を使うなら、1つ下の学年と同じ時期に、同じ流れで受けることになります。いま9月なら、次の新卒枠の本番は来年。それまで待てますか?
年齢の壁は、法律上どうなっているか
「既卒は年齢で切られる」と思っていませんか。ここは条文があります。
3号イには条件が付いています。職業経験を不問にすること。年齢で若手に絞りたい会社は、経験を問えません。だから求人票に「未経験可」「経験不問」「若手歓迎」と書きます。
ここが既卒の入口です。年齢を書いている求人は、経験を問えない。職歴が無い既卒は、その求人の対象そのものです。中途枠の中に、既卒が入れる場所が最初から用意されていることになります。
逆に「社会人経験3年以上」と書いてある求人は、年齢で切れない代わりに経験で切っています。既卒は対象外。求人票を読むとき、年齢と経験年数のどちらが書いてあるかを見れば、自分が入れるかどうかが先に分かります。
採る側が既卒の書類で見ていた1行
既卒の書類は、僕の会社では中途枠で読みます。第二新卒の書類と同じ机。だから見方も同じでした。
第二新卒の書類で落としていたのは、短期離職そのものより3つの書き方の問題でした。既卒に置き換えると、こうなります。
- 退職理由が書いていない → 既卒では「卒業後に就職しなかった理由が書いていない」。いちばん多い
- 何をやっていたかが分からない → 既卒では「卒業からいままで、何をしていたかが無い」
- 次も同じ理由で辞めそうに読める → 既卒では「就活がうまくいかなかった、で止まっていて、そのあと何をしたかが無い」
3つの中身は【落としていた3つ】第二新卒の書類が通らない理由に全部書きました。既卒の書類には職歴がありません。だから見る場所は1か所に絞られます。卒業からいままでの期間に、何をしていたかの1行があるか。
1行で足ります。無いと、読む側は想像で埋めます。想像はたいてい悪いほうに寄る。「就職活動中」の4文字だけの書類は、1つめの「理由が書いていない」と同じ扱いになっていました。
空白の長さで手が止まったことはありません。止まるのは、その空白が白紙のときです。あなたの書類は、卒業の行で終わっていませんか?
空白期間の書き方。落としていた書き方と通していた書き方
状況ごとの1行を並べます。嘘を書く必要はありません。事実を、順番を決めて書くだけです。
| 状況 | 書く1行の例 | 採る側が読み取ること |
|---|---|---|
| 内定が出なかった | 「卒業後も就職活動を続け、◯◯職に絞って応募しています。並行して◯◯のアルバイト」 | 続けている=止まっていない |
| 内定を辞退した | 「内定先の業務内容が希望と異なると分かり辞退。◯◯職に絞って再度就職活動」 | 辞退に理由があるか。絞った先があるか |
| 留学していた | 「◯年◯月〜◯月、◯◯へ語学留学。帰国後の◯月から就職活動」 | 日付で区切れているか |
| 試験を受けていた | 「◯年◯月まで◯◯試験の準備。◯月に区切りをつけ、民間企業の就職活動に切り替え」 | 区切りをつけた月があるか。切り替えの理由があるか |
右の列を見てください。読み取っているのは「日付」と「いま何をしているか」の2つだけ。空白の理由に点数を付けているのとは違います。
「就活がうまくいかなかった」は書いていい。ただ、そのあとに「だから◯◯に絞った」「◯月から◯◯を始めた」が要る。第二新卒で言う「辞める前に動いたか」と同じ場所です。事実の順番を決めるだけで、想像で埋められる余地が消えます。
既卒が使える入口は4つ
枠が2つしかないと書きました。でも、入口は4つあります。
| 入口 | 根拠 | 向いている人 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 新卒枠(既卒を受け付けている会社) | 青少年雇用促進法に基づく指針(卒業後3年) | 卒業後1〜2年で、職種を決めきれていない人 | 受け付けるかは会社ごと。1年に1回のサイクル |
| 中途の未経験可枠 | 労働施策総合推進法の例外3号イ(経験不問が条件) | 早く働き始めたい人。職種が決まっている人 | 「社会人経験◯年以上」の求人は対象外 |
| 既卒向けの紹介(エージェント) | 職業安定法32条の3(求職者は原則無料) | 既卒可の会社を自分で調べきれない人 | 決まって初めて報酬が出る構造。急かされたら断る |
| ハローワーク(新卒応援ハローワーク) | 厚生労働省の離職状況の公表資料に名前がある | 対面で相談したい人 | 何ができるかは窓口で確かめる |
1つめの「既卒を受け付けている新卒枠」は、自分で探すのがいちばん難しい。会社ごとに応募資格を読むしかなく、一覧はどこにもありません。そこで3つめが効きます。「いま既卒を受け付けている会社はどこか」を、エージェントに聞く。探す作業を自分でやると、終わりません。
無料で使えます。職業安定法32条の3で、有料職業紹介の手数料は原則として求人者(企業)から受けることになっているからです。僕はエージェント経由で1人採るたびに60万〜100万円を払っています。払っているのは会社側。
払う側だから分かることも書いておきます。エージェントは、あなたが入社して初めて報酬が出ます。だから急かされることがある。「まだ決めていない」と最初に伝えて、合わなければ断ってください。断り方の例文は【例文5つ】就活エージェントの断り方にあります。
いつまでに動くか。線は卒業後3年
指針の期限が卒業後3年。ここを過ぎると、新卒枠の入口は指針の対象から外れます。残るのは中途枠だけ。
では中途枠は減るのでしょうか。もう1つ数字を出します。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者)で、大学卒の就職後3年以内の離職率は33.8%。3人に1人が3年以内に辞めています。
採る側はこの数字を前提に採用計画を組みます。3年で3人に1人が抜けるなら、その分を毎年補充する。補充の入口が中途枠で、未経験可の求人はそこから出てきます。既卒が入る余地は、辞めた人の分だけ毎年空いている。
新卒枠(既卒可の会社)と中途の未経験可枠の両方が使える。いちばん選択肢が多い
新卒枠は指針の範囲内。1年に1回のサイクルに乗る。並行して未経験可枠に出す
中途枠のみ。未経験可の求人は残るが、選べる数は減る
中途枠の求人が増える時期も決まっています。1月〜3月/9月〜10月/6月〜7月。いまが9月なら、目の前に1つ来ています。次は年明け。
待つ理由がありますか?新卒枠の本番を待つ間に、未経験可枠に出す。両方を並行して動かすのが、採る側から見た既卒の動き方です。第二新卒の期限と並べて見たい人は【線を引くのは会社】第二新卒はいつまでを読んでください。
よくある質問
- 知恵袋で「既卒の就活は厳しい」と見ました。本当ですか
-
入口が少ないという意味で本当です。新卒枠と中途枠の2つしか持たない会社が多く、既卒はどちらの想定にも入っていません。能力の評価より前に、応募できる求人が少ない。ここを能力の問題と取り違えると、自分を責める方向に行きます。
- 既卒でも新卒枠に応募できますか
-
厚生労働省の指針で、事業主は卒業後少なくとも3年間は応募できるよう努めることとされています。努力義務なので、受け付ける会社と受け付けない会社があります。新卒採用ページの応募資格に「卒業後3年以内の方を含む」と書いてあるかを確認してください。
- 既卒は何年目まで既卒ですか
-
指針の期限は卒業後3年です。3年を過ぎると新卒枠の指針の対象から外れ、中途枠で動くことになります。中途枠でも、年齢を書いている求人は職業経験を問えない決まりなので、既卒が応募できる求人は残ります。
- 空白期間は正直に書いたほうがいいですか
-
書いてください。空白の長さより、白紙であることのほうが強く引っかかります。何をしていたか、いつ区切りをつけたか、いま何をしているか。この順で1〜2行あれば、読む側が想像で埋めずに済みます。
