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【引き止めは1回で終わる】新卒で退職が言いづらい | 受ける側の本音,民法627条,例文も

【引き止めは1回で終わる】新卒で退職が言いづらい | 受ける側の本音,民法627条,例文も

新卒で入って、辞めると決めた。でも上司に言えない。そのまま何日か過ぎていませんか。

「早く言ったほうがいい」とも言われるし、「新卒で辞めるなんて怒られる」とも言われる。上司の顔を思い浮かべるたびに、言葉が引っ込む。どちらが本当なのでしょうか。

僕はいまも人を採る側にいます。経営者として8年、採用の最終決裁をしてきました。その前に事業会社で採用担当を2年。面接した人数は、覚えていないけれど500人くらい。退職の申し出を受けるのも、経営者の仕事です。

受ける側から書きます。言いづらさの正体と、実際に何が起きるかを先に見せます。

※ 統計は厚生労働省の公表資料、法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月12日に確認しました。実務の記述は僕が関わってきた採用のものです。

目次

言いづらい理由は3つ。実際に起きるのは1つ

言いづらい理由を分けると、だいたい3つに収まります。怒られる。引き止められる。迷惑をかける。

この3つのうち、受ける側の立場で言うと、実際に起きるのは引き止めだけです。それも1回。

不安実際に起きるか受ける側で起きていること
怒られる怒る会社もある準備のできていない会社ほど怒る。会社側の問題
引き止められる起きる。1回採用にかけた費用を思い出している。1回止めて動かなければ、次の採用に切り替える
迷惑をかける想定内大卒の3年以内離職率33.8%を前提に、採用計画を組んでいる

大学を卒業して就職した人のうち、就職後3年以内に離職した割合は33.8%(令和4年3月卒業者。厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」令和7年10月24日公表)。事業所規模が1,000人以上でも27.0%、5人未満では57.5%。

国が毎年出している数字です。3人に1人が、3年以内に辞めている。どの規模の会社でも、新卒が辞めることは織り込み済みで、採用計画はこの数字の上に立っています。

では、「迷惑をかける」の中身は何でしょうか。あなたが思っているものと違います。次に書きます。

受ける側は、退職の申し出をこう受け取っている

申し出を受けた瞬間、受ける側の頭で動くのは2つです。

  1. いつ抜けるか — 引き継ぎと、次の採用の段取り。日付が決まらないと動けない
  2. いくらかけた人か — 採用にかけた費用。エージェント経由なら、1人採るたびに60万〜100万円の手数料を払っている

2つめが、引き止めの正体です。僕は理論年収の35%でエージェントと契約していました。60万〜100万円払って採った人が辞めると、次を採るのにまた同じ額がかかる。だから1回は止めます。あなたの人格の話をしているのでも、迷惑の話をしているのでもない。お金の話です。

では、なぜ1回で終わるのか。引き止めて残った人が、同じ理由でまた辞める。受ける側はそれを知っています。2回、3回と時間を使うより、次の採用に切り替えたほうが早い。1回の引き止めを越えれば、受ける側は次の段取りに移ります。

「迷惑」はどうでしょうか。迷惑の中身は、辞めることそのものより、日付が決まらないことです。「辞めるかもしれない」状態が長いほど、受ける側は段取りを組めない。決めたなら、早く言うほうが迷惑は小さくなります。

怒る会社はあります。それは、この2つを冷静に処理できない会社の問題です。あなたの側に原因はありません。

辞めるのは、法律上どうなっているか

「新卒で1年も経っていないのに辞められるのか」と思っていませんか。期間を定めていない雇用なら、条文は短いです。

民法627条1項(原文)「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」

「いつでも」「二週間」。この2つだけです。雇用契約書に期間の定めがなければ、この条文になります。会社の承諾は要りません。申入れをすれば、2週間の経過で終わる。辞めるかどうかを決める権利は、あなたにあります。

就業規則の「1か月前」との関係

就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」と書いてある会社が多い。2週間と1か月、どちらが優先するのでしょうか。

僕はここを断定しません。就業規則の期間を守れなかったときに何が起きるかは、会社と状況で変わります。

受ける側から言えるのは1つです。就業規則の期間に合わせて申し出るのが、いちばん摩擦が少ない。1か月あれば、引き継ぎと次の採用の段取りが組める。2週間だと、受ける側は段取りを組めないまま日が来ます。摩擦を減らしたいなら、就業規則の期間で出す。体調が限界なら、2週間の条文を思い出す。

言い方の例文3つ

受ける側にいると、引き止めが長引く申し出と、1回で終わる申し出には、はっきり差があります。差は3つです。

「相談」と言わずに「決めた」と言う

「ご相談があります」で始めると、受ける側は「まだ決めていない」と読みます。引き止めるのが仕事になる。
例文: 「お時間をありがとうございます。退職を決めましたので、お伝えします」

理由は1つに絞る

理由を3つ並べると、1つずつ「それなら対処できる」と返されます。1つなら返しようがない。
例文: 「別の職種に移ることに決めました。この会社の中では叶えられないと判断しました」

退職日を言う

日付が無いと「もう少し考えよう」に戻されます。就業規則の期間に合わせた日付を、こちらから出す。
例文: 「就業規則の1か月前に合わせて、退職日は◯月◯日を考えています。引き継ぎは指示に従います」

2つめの理由について、1つ足します。1年未満で辞めた人の理由で最も多いのは「人間関係がよくなかった」です(厚生労働省 令和5年若年者雇用実態調査)。目の前の上司が理由のこともある。その場合は「環境を変えたい」の1つで足ります。嘘を言う必要も、全部言う必要もありません。

引き止めが長引く言い方 — 「ちょっとご相談があって……最近しんどくて、辞めようかなと思っていて」。相談の形で、理由が曖昧で、日付が無い。受ける側は「迷っている」と読み、止めにかかります。

1回で終わる言い方 — 「退職を決めましたので、お伝えします。別の職種に移るためです。退職日は就業規則に合わせて◯月◯日を考えています」。決めた・理由1つ・日付。受ける側は、その場で次の段取りを考え始めます。

引き止められたときの返し方

準備しても、1回は来ます。来ると分かっていれば、返せます。

  • 「考え直してほしい」 → 「決めていますので、変わりません」。持ち帰らない。「考えておきます」と言った時点で相談に戻る
  • 「給料を上げる」「部署を変える」 → 「ありがたいですが、決めています」。条件で残ると、辞めた理由がそのまま残る
  • 「後任が決まるまで」 → 「退職日は◯月◯日でお願いします。引き継ぎ資料は作ります」。日付を動かさない
  • 「新卒で辞めるなんて非常識だ」 → 言い返さない。「決めています」だけ繰り返す。怒りは会社側の問題

4つに共通しているのは、同じ言葉を繰り返すことです。新しい理由を出すと、新しい引き止めが来る。「決めています」を何回言ってもいい。

それでも辞めさせない。有給を使わせない。退職金の話をはぐらかす。そこまで来たら、次の2つの章です。

退職証明書は請求できる(労働基準法22条)

怒られるのが怖い人ほど、ここを知っておくと楽になります。会社が後から言い分を変えられないように、証明書を請求できます。

労働基準法22条1項(原文)「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」
同条3項「前二項の証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。」

使い方は2つ。

  1. 退職の事由を、会社の書面で残せる — 自己都合として扱われたのか、解雇なのか。解雇ならその理由まで。言った言わないが残らない
  2. 会社が勝手に書き足せない — 3項。あなたが請求していない事項は記入できない。不利なことを添えて出すのを、条文が禁じている

請求すれば、会社は「遅滞なく」交付する義務を負います。受ける側で言うと、これを請求されて困るのは、書けないことをしている会社です。まともな会社なら、事務が1枚書いて終わります。

どうしても言えないなら

ここまで読んでも言えない。体調が崩れている。上司が怒鳴る。そういうときに退職代行を使う人がいます。使う人がいる、という事実だけ書いておきます。使ったからといって、民法627条の権利が変わることはありません。

代行を使ったときに揉めやすいのが、有給と退職金です。ここは本体サイトで条文ごと書いています。深掘りはそちらで。

業者の選び方や料金は、この記事では扱いません。使うかどうかを決める前に、上の2本で「辞めたあとに何が残るか」を確かめてください。

辞める前に、次の枠を確かめる

言い方の前に、1つだけやっておくことがあります。次の枠があるかを、辞める前に確かめる。理由は2つです。

1つは、退職日を言うときに、次の入社日から逆算できること。もう1つは、失業給付の条件です。

雇用保険の基本手当は、原則として離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あるときに支給されます(雇用保険法13条1項)。入社1年未満だと、この条件を満たしません。倒産・解雇などの場合は1年間に6か月(同条2項)。

新卒1年目で辞めると、無収入の期間が丸ごと自分の貯金から出ます。だから、辞める前に次の枠を見ておく。

確かめる相手は、転職エージェント1社で足ります。無料です。手数料は原則として求人者(企業)から取る決まりで、求職者から取れるのは限られた職種だけ。職業安定法32条の3にあります。払っているのは、採る側の僕たちです。

1社登録して、「新卒◯か月で辞めようとしている。いまの枠はあるか」と聞く。それだけで、辞めたあとの見通しが数字で見えます。急かされたら断って構いません。断り方は【例文5つ】就活エージェントの断り方 | 面談,求人紹介,内定辞退もに例文を置いています。

動く時期も選べます。中途の求人が増えるのは1〜3月、9〜10月、6〜7月。辞めるかどうかを確かめる順番は【26卒・入社半年】もう辞めたいときに見る順番 | 第二新卒の期限もに、辞めた人がどこへ行ったかは【3か月で辞めた人の行き先】新卒の早期離職 | 第二新卒の受け入れ実態もに書きました。入社1か月で決めたなら【入社1か月】新卒で辞めるときに確かめる順番も。

よくある質問

新卒で退職を言い出せません。誰に、いつ言えばいいですか

直属の上司に、就業規則の期間に合わせて言ってください。人事や同期に先に話すと、上司が最後に知る形になり、そこで怒りが出ます。「決めた」「理由1つ」「退職日」の3つを用意して、時間をもらってから話す。それで足ります。

新卒で退職を伝えたら怒られますか

怒る会社はあります。それは受ける側の準備の問題で、原因はあなたの側にありません。民法627条1項で、期間の定めのない雇用は申入れから2週間の経過で終わります。怒られても、辞める権利は動きません。

退職はメールやLINEで伝えてもいいですか

民法627条1項の原文に、申入れの方法についての定めはありません。受ける側の立場で言うと、口頭で伝えたあと、日付が残る形(退職届かメール)を出すのが穏当です。言った言わないを避けられます。

新卒1年目で辞めたら失業保険はもらえますか

原則は、離職の日以前2年間に被保険者期間が12か月以上(雇用保険法13条1項)。入社1年未満だと満たしません。条件を満たしていても、正当な理由のない自己都合退職は、待期満了の翌日から原則1か月は基本手当が出ません(2025年4月1日以降の離職)。辞める前に次の枠を確かめる理由が、ここにあります。

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