第二新卒で、職種を変えたい。未経験でどの職種なら採ってもらえるのか、と検索したはずです。
「営業なら未経験でも入れる」「ITは人手不足だから未経験歓迎が多い」。職種の名前を並べた記事がいくらでも出てきます。一方で「第二新卒で職種まで変えるのは甘い」とも言われる。どちらを信じればいいのでしょうか。職種の名前を見ている限り、答えは出ません。僕は職種名で決めていなかったからです。
僕はいまも人を採る側にいます。経営者として8年、採用の最終決裁をしてきました。その前に事業会社で採用担当を2年。未経験の職種に応募してきた第二新卒の書類も、採るかどうかを決める側で読んでいます。面接した人数は、覚えていないけれど500人くらい。
採る側から書きます。「未経験可」の求人がなぜ存在するのか。その計算がわかれば、どの職種に出すかは自分で決められます。
※ 統計は厚生労働省の公表資料、法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月12日に確認しました。実務の記述は僕が関わってきた採用のものです。
職種を変えたい第二新卒は、珍しくない
まず数字から。厚生労働省が、学校を出て働いている15〜34歳に聞いた調査がある。
20代前半で辞めた人の4人に1人以上が、仕事の中身を理由に挙げている。職種を変えたい。そう考えるのは自然な流れです。
別の統計も置いておきます。大学を卒業して就職した人のうち、3年以内に離職した割合は33.8%。若い正社員のうち「転職したいと思っている」は31.2%で、20〜24歳では35.0%といちばん高い。あなたと同じ動きをする人は、毎年まとまった数います。
採る側も、この数字を知っている。問題は、「未経験可」の枠がどういう計算で出ているかです。
「未経験可」の求人は、なぜ存在するのか
未経験の人を採ると、会社はいちど損をします。入社してから戦力になるまで、給料を払いながら教える期間がある。経験者なら、その期間が短い。
それでも未経験可の求人が出るのはなぜでしょうか。教える費用を、あとから回収できると計算しているからです。採る側の頭の中は、この2つの掛け合わせ。
- 教育にかかる期間 — 戦力になるまで何か月、給料を払い続けるか
- 辞めずに残る確率 — 教えた費用を回収し終える前に、辞められないか
1つめが短い職種ほど、未経験を採りやすい。2つめが高い人ほど採りやすい。「未経験可」は、職種の性質と、応募者が残りそうな度合いの両方で決まります。職種名は、この計算の入力の1つでしかない。
2つめの「残る確率」を、採る側は統計で見ています。大卒の3年以内離職率33.8%を、事業所の規模で割るとこうなる。5人未満の事業所で57.5%、1,000人以上で27.0%。小さい会社ほど、教えた人が3年以内に辞める前提で計画を立てざるを得ない。だから未経験を採るときの計算も、会社の規模で変わる。規模で何が変わるかは第二新卒で大手は無理なのかに書きました。
では、なぜ第二新卒に未経験可が多いのか。若いほど、回収に使える年数が長いからです。教える期間が長くても、そのあと長く働いてくれるなら、会社は元が取れる。この「若い人を、長く働く前提で採る」という形には、法律の名前が付いている。
法律の根拠。「未経験歓迎・若手」の求人は年齢制限の例外3号イ
「未経験歓迎」と「若手活躍中」。この2つが同じ求人票に並んでいるのを、見たことがあるはずです。並んでいるのは偶然でしょうか。法律が、そう書かせている。
順番はこうです。
- 会社は原則、年齢で募集を絞れない
- 若い人を長く育てたい会社は、例外の3号イを使う
- 3号イを使うには、職業経験を問わないと決めなければいけない
- だから「若手歓迎」の求人は、「未経験可」の形を取る
「未経験可」は優しさで書かれているとは限りません。若い人を採るための、法律上の条件です。経験者が欲しいなら年齢を書かずに「社会人経験3年以上」。若手が欲しいなら経験を問わずに「未経験可」。両方は書けません。
例外の6つを並べた表と、年齢と経験年数が両方書いてある求人の扱いは【線を引くのは会社】第二新卒はいつまでに置いてあります。おさえてほしいのは1つ。未経験可の求人は「若い人を、期間の定めなく、長く育てる」前提で出ている。前の章の「回収の計算」と、法律の形がぴったり重なる。
境目は社会人経験3年。超えると未経験可の枠が減る
実務で見ていた境目は社会人経験3年でした。3年を超えると、要件がポテンシャルから実績に変わる。未経験可の求人そのものが減る。
なぜ3年なのか。採る側の計算に戻ると見えてくる。
社会人3年を超えた人を採るとき、会社は「経験者を採る費用」で見ています。教える期間を短く見積もり、入社後すぐに前職の実績を出してもらう前提。そこに未経験の人が来る。計算が合わない。教える費用を見込んでいない枠に、教える必要のある人が来るからです。
3年以内なら、会社はまだ「育てる費用」を見込んでいる。3号イの形で、経験を問わずに募集している。同じ「未経験」でも、3年以内と3年超では、出せる枠の数がまるで違う。
いま、何年目でしょうか?3年目に入っているなら、動くのは早いほうがいい。1年目なら、時間はあります。焦って決める必要はないけれど、3年の線は待ってくれないと思っておいてください。
ここで1つ、近道を書いておきます。「いま、未経験可で開いている職種はどれか」は、求人票を1件ずつ読まなくてもわかります。転職エージェントに1社登録して、そのまま聞けばいい。求職者は無料です。職業安定法32条の3で、手数料は原則として求人者(企業)から受けると定められています。僕が払っていたのは、1人採るたびに60万〜100万円。あなたの側には請求されません。
手数料を払ってまで未経験を採る会社は、回収の計算を済ませています。エージェントが持っている未経験可の求人は、その意味で、育てる前提がはっきりしている。「まだ決めていない」と最初に伝えて構いません。急かされたら、【例文5つ】就活エージェントの断り方の例文で断ってください。
採る側が未経験の書類で見ていたのは、2つ
未経験の職種に応募してきた第二新卒の書類を、何で通していたと思いますか?職種名で落としたことはありません。見ていたのは2つです。
- 前職で何を残したか — 職種が違っても、残したものの型は移る。手順書、数字、引き継ぎ
- なぜその職種か — 前職の何が合わなくて、次の職種の何が合うと思っているか
1つめは「教える期間」の見積もりに使う。前職で手順書を作った人は、次の職種でも手順を覚える速さが読める。2つめは「残る確率」に使う。理由が筋になっていれば、次も同じ理由で辞めるとは読みません。2つとも、採る側の計算の入力そのものです。
2つめが抜けている書類が、とても多い。「未経験」を弱みだと思って隠そうとし、前職に触れずに意欲だけ書く。採る側から見ると、逆です。前職に触れていない書類のほうが、読むものが無い。
落とし方の3つ(退職理由が書いていない・何をやっていたかが分からない・次も同じ理由で辞めそうに読める)は【落としていた3つ】第二新卒の書類が通らない理由に書きました。未経験の応募では、この3つがそのまま「教える期間」と「残る確率」を読む材料になる。中途の書類通過率は15%前後。6〜7社出して1社です。5社落ちても、まだ母数のうちです。
同じ職種で会社を変えるか、職種ごと変えるか
ここで一度、立ち止まってほしい。辞めたい理由は、職種のせいでしょうか。会社のせいでしょうか。
最初の章の数字に戻ります。辞めた理由の上位3つは労働時間・人間関係・賃金で、「仕事が自分に合わない」は4番目でした。上の3つは、職種を変えなくても解決することがある。同じ職種で会社を変えれば済む話に、未経験の壁を自分で足していないでしょうか?
| 同じ職種で会社を変える | 職種を変える | |
|---|---|---|
| 使う枠 | 経験者枠。経験が積み上がるほど、要件を満たす求人が増える | 未経験可(3号イの形)。社会人3年を超えると減る |
| 急ぐか | 急がなくていい | 3年以内が有利 |
| 書類で見られるもの | 前職の実績。数字 | 前職で残したものと、なぜその職種か |
| 辞めた理由が労働時間・人間関係・賃金なら | 理由と行き先が一致する | 「なぜその職種か」が埋まらない。弱い |
| 辞めた理由が「仕事が合わない」なら | 同じ壁が次の会社でも出る | 理由と行き先が一致する |
右の列に進むのは、辞めたい理由が「仕事の中身」のとき。労働時間や人間関係が理由なら、左の列のほうが早くて、書類も通りやすい。職種を変えることは目的でしょうか。それとも、辞めたい理由を消す手段でしょうか。手段なら、消せる方法のうち、いちばん壁の低いものを選んでください。
辞めるかどうかをまだ決めていないなら、確かめる順番を【26卒・入社半年】もう辞めたいときに見る順番に書いています。辞めるかどうかは4番目でした。
未経験可の求人票は、応募資格の欄から読む
「未経験可」と書いてあれば、どれも同じでしょうか?違います。採る側の計算と3号イの形を知っていれば、読む場所は5つに絞れる。
- 応募資格に「職業経験不問」「未経験可」とあるか — 3号イの形。「業界未経験可」は同じ職種の経験を求めていることがあり、職種を変える人の枠とは別
- 雇用形態が期間の定めのない正社員か — 3号イは期間の定めのない契約が条件。契約社員の未経験可は、育てる前提の枠とは限らない
- 研修・教育期間が書いてあるか — 採る側が「教える費用」を見込んでいる証拠。無い未経験可は、入社後すぐの戦力を期待していることがある
- 年齢と経験年数の両方が書いてあるか — 両方あると、例外の6つに当たらない可能性がある。労働局に相談できる
- 業務の内容・賃金・労働時間が書いてあるか — 職業安定法5条の3で、募集する側には明示する義務がある。書いていないなら、聞いていい
3つめは、採る側にいるととくに気になる。教える期間を書けない求人は、教える計画が無いことがある。「未経験可」と「即戦力」が同じ求人票にあったら、計算が合っていない。
動く順番。職種を決めるのは3番目
順番を間違えると、職種名だけを追いかけて終わる。採る側の計算にそって並べると、こうなる。
職種のせいか、会社のせいか。前の表で左右を決める
手順書、数字、引き継ぎ。職種が違っても、これが「教える期間」の見積もりに使われる
前職の何が合わなくて、次の何が合うのか。ここで初めて職種を決める
自分で1件ずつ読むより早い。無料。急かされたら断る
職業経験不問か、期間の定めが無いか、研修期間があるか
職種を決めるのは3番目です。1と2を飛ばして職種名から入ると、「なぜその職種か」が書けない書類になる。
4つめには時期も関わります。中途の求人が増えるのは1〜3月、9〜10月、6〜7月。いまが何月でも、次の山までに1〜3を終えておくと、山が来たときに出せます。
そして、在職中に動くほうが書類は通りやすい。空白期間が生まれないからです。体調に問題が無いなら、辞める前に1〜4を済ませてください。
よくある質問
- 第二新卒で未経験の職種に転職できますか
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枠はあります。「未経験可」の求人は、若い人を経験不問で採る法律上の形(年齢制限の例外3号イ)で出ています。実務の境目は社会人経験3年で、超えると未経験可の求人が減ります。
- 第二新卒で未経験でも採ってもらえる職種はどれですか
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職種名で決まっていません。採る側は「教育にかかる期間」と「辞めずに残る確率」で決めていて、教える期間が短い職種ほど未経験可が出やすい。いまどの職種が開いているかは時期と会社で変わるので、エージェントに聞くか、求人票の応募資格欄で確かめてください。
- 第二新卒で職種を変えるのは何年目までですか
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法律に線はありません。僕が見ていた実務では社会人経験3年が境目で、3年を超えると要件がポテンシャルから実績に変わっていました。会社によって異なります。
- 未経験可と書いてあれば、経験ゼロでも応募していいのですか
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応募資格に「職業経験不問」とあれば、経験を問わない前提で募集しています。「業界未経験可」は同じ職種の経験を求めていることがあるので、職種を変える人はそこを読み分けてください。
