第二新卒の面接で「退職理由を教えてください」と聞かれる。正直に言えば落ちそうで、作った話は見抜かれそう。どう答えるか決まらないまま検索したはずです。
「前向きに言い換えろ」と書いてあるページが多い。その一方で「嘘はバレる」とも言われます。どちらを信じればいいのでしょうか。どちらも、聞く側が何を見ているかを書いていません。
僕はいまも人を採る側にいます。経営者として8年、採用の最終決裁をしてきました。その前に事業会社で採用担当を2年。面接で退職理由を聞く側です。面接した人数は、覚えていないけれど500人くらい。
採る側から書きます。先に言うと、面接官は退職理由の良し悪しを採点していません。確かめていたのは2つだけ。
※ 統計は厚生労働省の公表資料、法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月12日に確認しました。実務の記述は僕が関わってきた採用のものです。
面接官は、退職理由を採点していない
「退職理由が弱いと落ちる」と思っていませんか。採る側にいて、理由そのものに点をつけたことはありません。人間関係だから減点、残業だから減点、という採り方をすると、採れる人がいなくなるからです。
数字で見るとはっきりします。
大卒でも3人に1人が最初の会社を離れている。面接に来る第二新卒は、全員この中にいます。つまり、辞めたこと自体は選考の材料になりません。
では、何のために聞くのか。退職理由を聞く目的は過去の採点に無く、次の1年を予測するためです。面接官の頭にあるのは、あなたが入社した後の姿だけ。前の会社の話を聞きながら、見ているのは未来です。
確かめているのは、再現性と「動いたか」の2つ
退職理由を聞きながら、僕が見ていたのはこの2つでした。
- うちでも同じことが起きるか — 辞めた原因が、応募先にも同じ形であるか。あるなら、また辞める
- 辞める前に、自分で動いたか — 相談した、希望を出した、やり方を変えた。その形跡があるか
1つめは、答え方より求人の選び方で決まります。残業で辞めた人が残業の多い会社を受けたら、どう答えても落ちやすい。落とされたというより、合わない求人を受けています。これは面接の前に外せる問題です。
2つめは、答え方で決まります。動いた形跡が1つあれば、「環境のせいにする人」には読まれない。無ければ、同じ場面が来たときに同じように辞めると読まれます。
書類でも、同じところを見ていました。落としていたのは短期離職そのものより、【落としていた3つ】第二新卒の書類が通らない理由 | 短期離職の書き方もに書いた3つ。そのうち2つが「理由が書いていない」「動いた形跡がない」です。面接は、書類で読めなかったここを声で確かめる場になります。
あなたは辞める前に、何か1つ動きましたか? 上長に1回相談しただけでも、それは言えます。
辞めた理由は、労働時間・人間関係・賃金・合わない
言えば落とされそう、と思っている理由ほど、実は多数派です。初めて勤務した会社を辞めた主な理由を、厚生労働省の調査で見るとこう並びます。
| 辞めた理由 | 全体(15〜34歳) | 20〜24歳 |
|---|---|---|
| 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった | 28.5% | 31.0% |
| 人間関係がよくなかった | 26.4% | 30.0% |
| 賃金の条件がよくなかった | 21.8% | 16.7% |
| 仕事が自分に合わない | 21.7% | 27.8% |
3つまでの複数回答。厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」(在学していない15〜34歳の若年労働者)より。
20〜24歳では、労働時間31.0%、人間関係30.0%、仕事が合わない27.8%。上位3つは全部、面接で言いにくい理由です。これで落とすなら、第二新卒の採用そのものが成り立たない。
勤続期間階級別にみると、1年未満の期間では『人間関係がよくなかった』と回答した割合が最も高くなっており、1年〜10年未満の期間では『労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった』と回答した割合が最も高くなっている
厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」結果の概況
1年未満で辞めた人の一番の理由は人間関係。採る側もこの数字を知っています。だから「人間関係で辞めました」と聞いても驚かない。驚くのは、その後に何も続かないときです。3か月で辞めた人がどこへ行っているかは【3か月で辞めた人の行き先】新卒の早期離職 | 第二新卒の受け入れ実態もにまとめています。
言いにくい理由を隠す必要は無い。隠すと、面接官は想像で埋めます。想像は、たいてい悪いほうに寄る。
聞かれる質問と、答えなくていい質問の線
退職理由は答える。では、どこまで答えるのか。線は厚生労働省が引いています。
| 質問 | 厚生労働省の分類 | 面接での扱い |
|---|---|---|
| 退職理由・在籍期間・職務内容 | 適性・能力に関わる事項 | 聞かれる。事実を答える |
| 本籍・出生地 | 本人に責任のない事項 | 会社が聞かない事項。「お答えしかねます」で通る |
| 家族の職業・収入・病歴 | 本人に責任のない事項 | 同上 |
| 宗教・支持政党・思想 | 本来自由であるべき事項 | 同上 |
| 尊敬する人物・愛読書 | 本来自由であるべき事項 | 同上。面接の定番だが、答えなくて構わない |
意外なのは「尊敬する人物」でしょう。面接の定番だと思われていますが、厚生労働省の分類では本来自由であるべき事項に入っています。聞くほうに問題がある質問です。
退職理由は逆です。適性・能力に関わるので、聞かれるのが前提。「一身上の都合で」と逃げる答え方は、書類で理由を書かないのと同じに読まれます。答えない、という選択肢はここにはありません。
家族のことや本籍を聞かれたら? 「お答えしかねます」で構いません。それで落とす会社なら、入ってからも同じことをします。
落としていた答え方と、通していた答え方。3場面
場面ごとに並べます。左右を分けているのは、たった1つ。自分が動いた1文があるかです。
人間関係で辞めた
上司の悪口は一言も入っていない。入っているのは、自分が変えたこと2つと、次の動き方です。
労働時間で辞めた
労働条件は、労働基準法15条1項で会社が明示する義務のあるものです。求人票と実態が違ったなら、そう言って構わない。会社側の落ち度を、自分の弱さとして語る必要は無い。
仕事が合わなくて辞めた
3つとも同じ形をしています。何が起きたか、自分が何をしたか、それでも変わらなかったから辞めた、次はこうする。この順番なら、理由が何であれ「環境のせいにする人」には読まれません。
1分で言い切る型。事実、動いたこと、次
面接で長く話すと、言い訳に聞こえます。4文で組んでください。
「残業が続いた」「上司と進め方が合わなかった」。感情の言葉は入れない
相談した、希望を出した、やり方を変えた。結果が出ていなくてもいい
ここで初めて「退職」の言葉を出す
応募先で同じ場面が来たときの動き方。ここまで言えて、話が前を向く
2つめが出てこない人がいます。「何もしていない」と思っている。でも、上長に1回話した、同期に相談した、自分で手順を変えてみた。どれか1つはやっているはずです。思い出せませんか?
本当に何もしていないなら、作らないでください。4つめに力を入れれば足ります。「当時は自分で抱えました。次は早い段階で相談します」で、動かなかったことが学習に変わる。
26卒でいま迷っている人は、辞める前に1つ動いておくと、この2つめが埋まります。順番は【26卒・入社半年】もう辞めたいときに見る順番 | 第二新卒の期限もに書きました。
答え方は、1人と組んでから面接に行く
この型を1人で組むのは難しい。書いた本人には、書いていないことが見えません。動いたことを本人が忘れているのに、他人は5分で拾います。
相手として使いやすいのは転職エージェントです。求人側が退職理由をどう読むかを知っていて、面接の前に聞き役をしてくれる。求職者は無料で使えます。理由は職業安定法にあります。
転職が決まって初めて報酬が出る構造なので、急かしてくる担当者もいます。「まだ受ける会社を決めていない。退職理由の整理を先にしたい」と最初に言ってください。それで話を聞く相手なら、組む価値があります。急かされたら断って構いません。断り方は【例文5つ】就活エージェントの断り方 | 面談,求人紹介,内定辞退もにあります。
1社でいい。2社、3社と登録すると、同じ話を何度もすることになります。
経歴の嘘は、入社手続きで分かる
「退職理由を作るくらいなら、在籍期間を伸ばすか、1社を消せばいい」と考える人がいます。これはやめてください。入社後の手続きで出ます。
- 雇用保険の資格取得届 — 過去に被保険者だった人は、被保険者番号を書く欄がある。前職で雇用保険に入っていた事実がここで分かる
- 源泉徴収票と年末調整 — 同じ年に前の会社から給与を受けていれば、次の会社の年末調整でその分を含めて計算する。前の会社が発行した源泉徴収票を出すことになる
つまり、「前職は無い」「1社だけ」といった経歴そのものの嘘は、書類の段階でほころびます。短期離職を履歴書から消すとどうなるかは、短期離職を履歴書に書かないと何が起きるか | 手続きで分かる線もに分けて書きました。
では、退職理由そのものは分かるのか。ここは線が違います。退職証明書(労働基準法22条1項)には退職の事由を書けますが、本人が請求した事項しか書けません(同条3項)。前職に照会するリファレンスチェックもあり、僕も依頼したことがありますが、全員に行うものでも、本人に知らせずに行うものでもない。退職理由が照会で分かる、とまでは言えません。
だから嘘をついていい、という話ではありません。作った理由は、深掘りの2問目で止まります。「そのとき上長は何と言いましたか」「次はどうしますか」。本当に動いた人は即答できて、作った人は間が空く。面接官が見ているのは理由の中身より、この間です。
よくある質問
- 第二新卒の面接で退職理由は正直に言っていいですか
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言っていいです。厚生労働省の調査では、初めての会社を辞めた理由の上位は労働時間28.5%、人間関係26.4%で、面接官もそれを知っています。「環境が悪かった」で終わらせず、辞める前に自分が動いたことと、次にどうするかを足してください。
- 退職理由が人間関係のとき、面接ではどう答えますか
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上司や同僚の評価は言わず、仕事の進め方が合わなかった事実と、自分が変えたことを言います。「報告の仕方を変えた」「先輩に間に入ってもらった」の1つで足ります。最後に、次は早めに相談する、と足してください。
- 面接で「一身上の都合」で通せますか
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通りにくいです。退職理由は適性・能力に関わる事項で、厚生労働省の「公正な採用選考の基本」でも聞かれる側に入っています。書類で理由を書かないのと同じで、面接官が想像で埋めることになります。
- 転職の面接で退職理由を嘘で答えるとどうなりますか
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在籍期間や会社数といった経歴の嘘は、雇用保険の被保険者番号や源泉徴収票で、入社手続きの段階でほころびます。退職理由そのものは書類からは分かりませんが、深掘りの質問で止まります。作るより、動いたことを1つ足すほうが早いです。
