数週間、あるいは数か月で辞めた会社が1つある。履歴書の職歴欄に、それを書きたくない。書かなければ分からないのではないか。そう思って検索していませんか?
「短期離職は書かなくてもバレない」と書いている記事があります。「試用期間中の退職なら書かなくていい」と書いている記事もある。どちらを信じればいいのでしょうか。入社手続きの側から見ると、どちらも成り立ちません。
僕はいまも人を採る側にいます。経営者として8年、採用の最終決裁をしてきました。その前に事業会社で採用担当を2年。短期離職の書類を落とす判断も、通す判断もしてきました。面接した人数は、覚えていないけれど500人くらい。
書かなかった職歴が次の会社に出てくる仕組みと、短い在籍を採る側がどう読んでいたか。この2つを順に書きます。
※ 統計は厚生労働省の公表資料、法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月12日に確認しました。実務の記述は僕が関わってきた採用のものです。
結論は「書く」。理由は2つ
先に答えを置きます。短期離職の職歴は、履歴書に書いてください。理由は2つです。
- 書かなくても、次の会社の手続きで出てくる — 雇用保険と源泉徴収票。どちらも法令で決まった手続きで、会社の裁量が入る余地がない
- 採る側は、在籍の短さで落としていない — 落としていたのは、書き方のほうだった
2つめから数字を出します。僕が見ている中途採用(第二新卒を含む)の書類通過率は15%前後。6〜7社出して1社通る計算です。この15%を分けていたのは、在籍月数とは別のところでした。
落ちていたのは別の3つ。あとの章で書きます。
1つめの「出てくる仕組み」は、3つに分かれます。どれも、次の会社に入る日に動くもの。
- 雇用保険の資格取得届 — 雇用保険法7条、同施行規則6条1項
- 源泉徴収票と年末調整 — 所得税法226条1項、190条
- 退職証明書 — 在籍した事実は書面になる。労働基準法22条
条文を1つずつ見ていきます。ここが「書かない」を選べるかどうかの分かれ目です。
仕組み① 雇用保険の被保険者番号は、消えない
前の会社で雇用保険に入っていましたか? 入っていたなら、あなたには被保険者番号が1つ付いています。
事業主の側には届出の義務があります。雇用保険法7条で、雇用する労働者が被保険者となったこと、被保険者でなくなったことを届け出なければならない。入るときも、辞めるときも、記録が残る仕組みです。
かっこの中を読んでください。過去に被保険者だった人に限る欄です。この欄が埋まる人は、どこかで雇用保険に入っていた人。次の会社があなたの職歴を調べにいっているわけではありません。手続きの様式に、その欄があるだけ。
番号は、年が変わっても消えません。転職を何回しても1つのまま。
国の統計も、同じ記録から作られています。厚生労働省が毎年出している新規学卒就職者の離職率は、事業所からハローワークに提出された雇用保険の加入届をもとに、新規学卒者と推定される就職者数を算出し、その離職日から離職者数と離職率を出したもの。大学卒業者の3年以内離職率33.8%(令和4年3月卒業者)は、そうやって数えられた数字です。
個人の入退社は、国が統計を作れる程度には記録されています。在籍が1か月でも、2週間でも同じ。入社1か月で辞めるときに起きることは【即時か2週間か】新卒1ヶ月で辞めるとどうなるのかにまとめました。
仕組み② 源泉徴収票と年末調整。年をまたぐと経路が変わる
2つめ。前の会社には、あなたに源泉徴収票を渡す義務があります。
辞めてから1か月以内に、手元に届く書類です。届いていますか? 見当たらないなら、前の会社に請求してください。
これが次の会社でどう使われるか。年末調整です。
同じ年のうちに辞めて、同じ年のうちに次の会社へ入った人は、前の会社の給与を含めて計算されます。源泉徴収票を出すことになる。そこで、書いていない職歴が出てきます。
条文が見ているのは「その年」です。年をまたいで入社したなら、この経路では出てきません。源泉徴収票は1月から12月で区切られる話。被保険者番号のほうは、年で切れません。
2つは別の仕組みです。混ざりやすいので、分けて考えてください。「年明けの入社なら平気」は、片方しか見ていない話。
仕組み③ 在籍した事実は、自分で書面にできる
3つめは、少し性質が違います。あなたの側から出せる書類です。
退職証明書です。在籍を証明する書類を自分で取れることは、知っていましたか? 請求すれば、会社は遅滞なく交付しなければならない。辞め方がこじれた会社でも、義務は義務として残ります。
3項が効きます。請求していない事項は、記入してはならない。使用期間だけを請求すれば、使用期間だけが書かれた証明書が出ます。退職の事由を書かれたくないなら、そこを請求しない。選べるのは、あなたの側です。
採る側にいると、前職の在籍を確かめたい場面が出てきます。僕もリファレンスチェック(前職への照会)を依頼したことがある。そのときに困るのは、書いてある職歴と手続き上の記録が食い違う形でした。
食い違えば、採る側が考えることは1つ。なぜ書かなかったのか。在籍3か月そのものより、書かなかったことのほうが重く読まれます。
書かなかった職歴が経歴詐称になるのかも、気になると思います。就業規則に懲戒の定めを置く会社が多く、発覚すれば懲戒の対象になり得ます。どこまでが対象かは、会社の規定と事情によります。ここは断定できません。
「試用期間だから書かなくていい」は誤解
試用期間中に辞めた人が、いちばん引っかかる話です。根拠として挙がるのが労働基準法21条。条文を読むと、向きが逆でした。
20条は「会社が解雇するときは30日前に予告しなさい」。21条は、その予告義務を試の使用期間中の者には課さない、という条文です。主語は使用者。21条の14日は解雇予告の話で、履歴書とは無関係です。
試用期間かどうかで変わるのは、解雇予告のほう。履歴書に関わるのは、前の章までの3つです。試用期間中の1か月でも、雇用保険に入っていれば被保険者番号は付きます。
では、雇用保険に入っていなかった短期のアルバイトはどうなるのでしょうか。ここは確認できた資料が無いので、断定しません。求人票の記載と、応募先から指示された書き方に従ってください。応募先に聞いて構いません。
採る側は、在籍の短さで落としていない
ここからは採る側の話です。6〜7社に1社という関門を、何が分けていたか。
第二新卒の書類を見るとき、在籍月数は最初に目に入ります。そこで手が止まることは、ほとんどありませんでした。短さそのもので落とした記憶が、僕にはありません。
在籍月数で止まらないなら、採る側はどこを見ていたと思いますか? 落としていたのは、この3つでした。
- 辞めた理由が書いていない — 触れずに飛ばしている。読む側は想像で埋めることになり、想像は悪いほうへ寄る
- 辞める前に動いた形跡がない — 相談も希望も出さずに辞めたように読める
- 職務内容が役職名だけ — 会社名と部署名で終わっている
3つとも、在籍の長さと関係ありません。在籍10か月でも、埋まっていれば通していました。3年いても、空いていれば落ちます。
短期離職の職歴があっても、動いた1行が入っていれば通していた。3つの中身と直し方は【落としていた3つ】第二新卒の書類が通らない理由に全部書いています。3か月で辞めた人がどの枠で動けるかは【3か月で辞めた人の行き先】新卒の早期離職のほうに。
隠すかどうかで悩んでいる時間を、この3つに使ってください。通過率が動くのは、そちらです。
落としていた書き方と、通していた書き方
同じ在籍3か月でも、書き方で読まれ方が変わります。実際に見た形で並べます。
右が特別に立派なわけではありません。「自分が動いた1行」が入っているだけです。
履歴書と職務経歴書、どちらに何を書くか決まっていますか? 2枚で役割を分けてください。
| 書類 | 書くこと | 書かないこと |
|---|---|---|
| 履歴書の職歴欄 | 年月・会社名・入社と退職の事実だけ | 退職理由の説明、感想 |
| 職務経歴書(職務要約) | 在籍中に触った業務。件数・社数・金額のどれか1つ | 役職名と部署名だけの記述 |
| 職務経歴書(備考) | 辞めた理由を2〜3行と、自分が動いた1行 | 前の会社への不満で終わる書き方 |
| 本人希望欄 | 次に優先する条件(勤務地・職種など) | 在籍期間をぼかすための言い回し |
右端の列が、書きたくない気持ちの受け皿になる場所です。在籍を短く見せる言い回し、月を省いて年だけ書く形。そこを触ると、手続きで職歴が出てきたときに説明できなくなります。
履歴書と職務経歴書は、どこから直すか
上から順に、1つずつで構いません。全部を一度に直す必要はありません。
雇用保険被保険者証が手元にあるか、給与から雇用保険料が引かれていたか。入っていたなら、書く前提で進める
「2026年4月 株式会社◯◯ 入社」「2026年6月 一身上の都合により退職」。理由の説明はここに入れない
何が起きて、自分は何をして、それでも解決しなかった、の順。3行で足ります
件数・社数・金額のどれか1つ。研修だけで終わったなら、受けた研修の内容と期間を書く
3つのどれが空いているかは、他人なら5分で分かる。書いた本人には、書いていないものが見えない
5つめで止まる人が多い。誰に読んでもらえばいいのでしょうか。
友人や家族は、書類の読まれ方を知りません。大学のキャリアセンターは新卒の就活が専門で、短期離職のあとの中途は範囲外のことがある。応募書類を毎日読んでいるのは、エージェントと採用担当だけです。
転職エージェント、または就活エージェントに1社登録して、この職歴をどう書くか聞く。無料で使えます。理由は条文にあります。
払っているのは採る側です。僕もエージェント経由で1人採るたびに60万〜100万円の手数料を払ってきました。その金額の中に、応募書類を整える手間が入っています。
ただし、転職が決まって初めて報酬が出る構造です。「まだ決めていない。書類の書き方を聞きたいだけ」と最初に言ってください。それで話を聞いてくれるところと、急かしてくるところに分かれます。急かされたら、断って構いません。
面接で聞かれたときは、順番で答える
書類が通れば、次は面接です。短い在籍については、たいてい聞かれます。
採る側が確かめていたのは1つでした。同じことがうちで起きたとき、この人はどうするか。過去を責めたいわけではありません。
答え方は書類と同じ順番になります。何が起きて、自分は何をして、それでも解決しなかった。そこに「次はこうする」を1つ足す。反省だけで終わると弱い。その答え、いま口に出して言えますか?
困るのは、履歴書に書かなかった職歴について聞かれたときです。答えが用意できません。書いてある職歴は説明できます。書いていない職歴は、説明する場面すら選べません。
場面別の例文は【確かめていた2つ】第二新卒の面接で聞かれる退職理由に置いています。答えなくていい質問の線も、そちらに書きました。
公的な線も知っておいてください。厚生労働省「公正な採用選考の基本」は、採用選考を応募者の適性・能力に基づいた基準で行うものとしています。本籍・出生地、家族、住宅状況、思想は、把握すると就職差別につながるおそれのある事項。退職理由・在籍期間・職務内容のほうは、適性や能力に関わる事項です。聞かれる前提で用意してください。
よくある質問
- 短期離職を履歴書に書かないとバレますか
-
前の会社で雇用保険に入っていたなら、次の会社の資格取得届に被保険者番号を書く欄があります(雇用保険法施行規則6条1項)。同じ年のうちに入社すれば、年末調整で前の会社の源泉徴収票も要ります(所得税法190条)。手続きの側で出てくるので、書いてください。
- 試用期間中に辞めた会社は履歴書に書かなくていいですか
-
労働基準法21条の14日は、会社が予告なしに解雇できる期間の話で、履歴書とは関係ありません。試用期間中でも雇用保険に入っていたなら、書く前提で考えてください。
- 2週間で辞めた会社も書きますか
-
在籍日数で線は引かれていません。雇用保険に入っていたかどうかで考えてください。入っていなかった短期のアルバイトの扱いは確認できた資料が無いので、求人票の記載と応募先の指示に従ってください。
- 書かなかったら経歴詐称になりますか
-
就業規則に懲戒の定めを置いている会社が多く、発覚すれば懲戒の対象になり得ます。どこまでが対象かは会社の規定と事情によります。採用の実務で言えば、短い在籍そのものより、書かなかったことのほうが重く読まれました。
- 短期離職があると書類は通りませんか
-
僕が見ている中途採用の書類通過率は15%前後で、在籍の短さを理由に落としたことはほとんどありません。落としていたのは、辞めた理由が書いていない、動いた形跡がない、職務内容が役職名だけ、の3つでした。
次に読むもの
- 【引き止めは1回で終わる】新卒で退職が言いづらい | 受ける側の本音,民法627条,例文も
- 【通過率9%→24%】新卒の書類選考で落ちる理由 | 採用担当が見ていた3か所も
- 【採る側の計算】第二新卒が未経験の職種に移るなら3年以内 | 法律の根拠,求人票の読み方も
この記事で確認した資料
- 雇用保険法 7条(被保険者となったこと・でなくなったことの届出)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116 / 同施行規則 6条1項(資格取得届に記載する被保険者番号。原文は「過去に被保険者となつたことがある者に限る」)https://laws.e-gov.go.jp/law/350M50002000003 / 2026年9月12日確認
- 所得税法 226条1項(源泉徴収票の交付。年の中途で退職した者は退職の日以後1か月以内)、190条(年末調整は他の給与支払者が支払った給与を含めて計算)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033 / 2026年9月12日確認
- 労働基準法 20条1項・21条(解雇の予告と、試の使用期間中の者への適用除外)、22条1項・3項(退職時の証明書と、請求しない事項の記入禁止)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049 / 2026年9月12日確認
- 職業安定法 32条の3(手数料は原則として求人者から)、同施行規則 20条2項(求職者から受ける手数料の上限は賃金の100分の11)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 / 2026年9月12日確認
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)— 厚生労働省 令和7年10月24日公表。大学卒業者の3年以内離職率33.8%。集計は事業所からハローワークに提出された雇用保険の加入届によります https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html / 2026年9月12日確認
- 公正な採用選考の基本 — 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm / 2026年9月12日確認
- 書類通過率15%前後と手数料60万〜100万円は、僕が採用の決裁をしてきた企業1社の実数です。業界・企業規模・年度で変わります
- 実務の記述は僕が関わってきた採用1社のものです。会社によって異なります
