新卒で入社して、もうすぐ1年。辞めて転職したい。でも1年で辞めたら不利になるのか、辞めるならいつなのか。検索するほど、答えが割れていませんか?
「1年は区切りだから、せめて1年は働け」と書かれています。「1年でも3年でも見方は変わらない」と書く人もいる。どちらを信じればいいのでしょうか。採用の側に、1年という線はありません。線があるのは雇用保険のほうです。
僕はいまも人を採る側にいます。経営者として8年、採用の最終決裁をしてきました。その前に事業会社で採用担当を2年。1年で辞めた人の書類を落とす判断も、通す判断もする側です。面接した人数は、覚えていないけれど500人くらい。
採る側から見た1年と、制度から見た1年。この2つを1つに並べます。だからこの記事は、最後にカレンダーの話になります。
※ 統計は厚生労働省の公表資料、法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月12日に確認しました。実務の記述は僕が関わってきた採用のものです。
「1年」は、採る側にとっての境目ではない
いちばん気にしている部分から書きます。在籍1年だから落とす、という運用を僕はしていません。
中途の書類選考で、僕のところを通っていたのは15%前後でした。6〜7社出して1社。第二新卒も、同じ母集団の中にいます。そして落ちた側と通った側を分けていたのは、在籍年数ではない。
実務で境目になっていたのは社会人経験3年です。3年を超えると、求められるものがポテンシャルから実績に変わる。1年は、その手前にまるごと入っています。
だから1年と1年半で、扱いが変わることはない。1年を待って辞めるか、11か月で辞めるか。採用の書類の上では、この差が効きません。線の引かれ方は【線を引くのは会社】第二新卒はいつまで | 3年の根拠,既卒との違いもにまとめました。
では、1年という数字に意味は無いのか。あります。雇用保険です。そこは後半に書きます。
1年で辞める人は珍しくない。理由が1年を境に入れ替わる
数字を置きます。国が毎年出しているものです。
3人に1人。会社の規模でも開きます。事業所規模5人未満は57.5%、1,000人以上は27.0%。小さい会社にいるほど、辞める人は多い。
ここからが、1年の人に関係する部分です。厚生労働省の若年者雇用実態調査(令和5年)は、初めて勤めた会社をやめた理由を勤続期間で分けています。
勤続期間階級別にみると、1年未満の期間では「人間関係がよくなかった」と回答した割合が最も高くなっており、1年〜10年未満の期間では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」と回答した割合が最も高くなっている
厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」概況(2026年9月12日確認)
1年を境に、辞める理由の1位が入れ替わっています。1年未満は人。1年を過ぎると、労働時間と休日。
心当たりはありますか? 入って数か月で辞めたくなるのは、人の問題であることが多い。1年続けた人が辞めたくなるのは、働き方そのもの。前者は【即時か2週間か】新卒1ヶ月で辞めるとどうなるのか | 履歴書,雇用保険,新卒枠も、半年の人は【26卒・入社半年】もう辞めたいときに見る順番 | 第二新卒の期限もに分けています。
全体の上位4つはこうでした(3つまでの複数回答)。
- 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった 28.5%
- 人間関係がよくなかった 26.4%
- 賃金の条件がよくなかった 21.8%
- 仕事が自分に合わない 21.7%
20〜24歳だけで見ると、順番が少し動きます。労働時間・休日・休暇31.0%、人間関係30.0%、仕事が自分に合わない27.8%、賃金16.7%。1年前後で辞める人の景色は、だいたいこの4つの中にあります。
辞めたいと思っているのも、あなただけではない。若年正社員のうち31.2%が「転職したいと思っている」と答えています。20〜24歳は35.0%。ここも3人に1人。
甘えかどうかを気にしているなら、【甘えかどうかは見ない】新卒で辞めたいのは甘えか | 採る側が確かめる2つ,辞め方もに書きました。採る側は、甘えかどうかを判定していません。
採る側が、1年の書類で見ていた3つ
在籍1年と書いてあれば、目には入ります。そこで手が止まるかというと、止まりません。落としていたのは、短さそのものではない。3つのどれかが空いているときでした。
- 辞めた理由が書いていない — 触れずに飛ばしている。読む側が想像で埋めることになる
- 辞める前に動いた形跡がない — 相談も希望も出さずに辞めたように読める
- 職務内容が役職名だけ — 会社名と部署名で終わっている
1年の書類で多いのは1つめです。退職理由の欄が「一身上の都合により退職」だけ。想像で埋めた理由は、悪いほうに寄ります。
2つめは、1年あれば書けるはずです。1か月で辞めた人との差が、ここに出る。異動の希望を出した、上長に相談した、担当替えを頼んだ。結果が変わらなくても、動いた事実は書けます。3つの直し方は【落としていた3つ】第二新卒の書類が通らない理由 | 短期離職の書き方もに全部あります。
3つめは職務経歴のほう。「営業部 所属」で終わっている書類が、いまだに届きます。1年いたなら、件数か社数か金額のどれか1つは出せる。
この3つ、辞めてから埋めようとすると間に合いません。在職のうちに、外の人に1回見せてください。相手の選び方は後半に書きます。
雇用保険には、12か月という線がある
ここが、1年という数字に意味が出てくる場所です。
12か月です。1年ではありません。似ていますが、同じではない。
被保険者期間は月で通算します。だから、在籍が1年ちょうどでも、通算12か月に届くかどうかは入社日と退職日の並びで変わる。1年働いたから受給できる、と決めつけないでください。
ここで「◯日まで在籍すれば大丈夫」とは書きません。当てはめは、あなたの入社日と退職日でしか決まらない。退職日を会社に伝える前に、ハローワークの窓口で通算を確かめてください。順番が逆になると、あとから動かせなくなります。
窓口で確かめることは、この3つで足ります。
- 自分の被保険者期間が、離職の日以前2年間で通算何か月になるか
- 前に雇用保険に入っていた期間があるか(離職の日以前2年間の分は通算の対象。13条1項)
- 退職日を数日ずらすと、その通算が変わるかどうか
例外もあります。13条2項で、倒産・解雇などの特定受給資格者と特定理由離職者は、離職前1年間に被保険者期間6か月以上。自分の意思で辞める場合にこの枠へ入るかどうかは、ハローワークの判断になります。自己申告で決まる話ではない。
自己都合だと、原則1か月は基本手当が出ない(2025年4月から)
12か月に届いていても、すぐには振り込まれません。自分から辞めた場合の話です。条文はこうなっています。
「1か月以上3か月以内」。幅があります。どこに落ちるかは、2025年4月1日に運用が変わりました。
- 2025(令和7)年4月1日以降の離職は、原則1か月(通達の改正で2か月から短縮)
- 5年間で3回以上の自己都合離職は3か月
- 離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練を行った場合は給付制限を解除
出典は厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」です。1年で辞める人のほとんどは、1回目の自己都合になります。3か月のほうには当たらない。
読み替えると、こうなります。辞めてしばらくは、無収入で暮らす前提で日付を決める。手当をあてにして退職日を先に決めると、そこで詰まります。
教育訓練の解除は、対象になる訓練が決まっています。自分が受けたもの、受けようとしているものが当たるかどうかは、ハローワークで聞いてください。
辞める日付は、この順で決める
ここまでの話を、カレンダーに落とします。先に、辞める側の根拠になる条文を1つ。
申入れから2週間。会社の承諾という言葉は、条文に出てきません。とはいえ、就業規則に退職の申出時期が書かれている会社もあります。手元の就業規則を1回開いてください。
退職日を口に出す前に、ハローワークで離職の日以前2年間の被保険者期間を確かめる。12か月に届くかどうかで、退職日が動きます
退職の申出をいつまでにするか、書いてある会社があります。民法627条1項の2週間と、どちらが長いかを見る
在職中のほうが書類は通りやすい。空白期間が生まれないからです。辞めてから始めると、選考の途中で焦りが出ます
中途の枠が増えるのは1〜3月、9〜10月、6〜7月。書類がその山に届くよう逆算する
口頭で伝えたあと、日付の入ったメールを1通。いつ申し入れたかを、あとから示せるようにしておく
1つめを飛ばす人が多い。給付制限が原則1か月に短縮されたとはいえ、12か月に届かなければ、そもそも支給の対象になりません。日付の話は、感情の話より先に済ませてください。
転職先で「1年」をどう説明するか
面接で聞かれます。退職理由も、在籍期間も、職務内容も。これらは適性・能力に関わる事項なので、聞くこと自体に問題がない。
逆に、答えなくていいことも決まっています。本籍・出生地、家族の職業や収入、住宅状況、宗教、支持政党、愛読書。厚生労働省が「把握すると就職差別につながるおそれがある」としている事項です。ここを聞いてくる会社なら、選考の作り方から疑っていい。
上の主語は全部「会社」です。下は全部「僕」になっている。1年という長さを、こちらから謝る必要もありません。謝った瞬間に、短さが論点になります。
動いた事実が思い当たらない、という人へ。いまからでも間に合います。上長に1回相談する、異動の希望を出す。1か月後の面接で、そのまま話せます。
同じ職種で移るか、未経験の職種に変えるか
1年で辞める人の分かれ道は、ここです。どちらを選ぶかで、急ぐかどうかが変わる。あなたはどちらでしょうか。
職種を変えたいなら、3年以内のほうが有利です。理由は、求人を出す側の事情にあります。
募集と採用は、原則として年齢にかかわりなく均等な機会を与えることになっています(労働施策総合推進法9条)。例外がいくつかあって、その1つが長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合(施行規則1条の3第1項3号イ)。これは職業経験を問わないことが条件です。
「未経験可・若手歓迎」の求人が成り立つ根拠が、ここ。職業経験を問わない枠なので、1年の職歴があっても外れません。そして社会人経験3年を超えると、この枠の求人そのものが減っていきます。例外の一覧は【線を引くのは会社】第二新卒はいつまで | 3年の根拠,既卒との違いもに表で置きました。
| 進み方 | 1年の経験がどう読まれるか | 急ぐかどうか |
|---|---|---|
| 同じ職種で会社を変える | 1年分が、そのまま実務経験として読まれる | 急がない。経験が積み上がるほど、選べる求人は増える |
| 職種を変える(未経験の枠) | 社会人としての下地。職業経験を問わない枠を使う | 急ぐ。社会人経験3年を超えると、未経験可の求人が減る |
| 新卒枠に戻る(既卒) | 卒業後3年以内なら、受け付ける会社がある(指針。努力義務) | 卒業した年から3年で期限が来る |
3行目の根拠は、厚生労働省のリーフレット「卒業後3年以内の既卒者は、『新卒枠』での応募受付を!」です。事業主は「既卒者が卒業後少なくとも3年間は応募できるように努めること」とされている。努めること、なので努力義務。受け付ける会社と受け付けない会社に分かれます。
動くなら、時期と枠を先に聞く
中途の求人には、厚くなる時期があります。採る側にいるので、そこは分かる。
- 1月〜3月 — 4月入社に合わせた募集。第二新卒の枠がいちばん増える
- 9月〜10月 — 下期の開始前。上期に採り切れなかった枠が回ってくる
- 6月〜7月 — 新卒採用が一段落して、中途の増員が通りやすい
そして、在職中の応募のほうが書類は通りやすい。空白期間が生まれないからです。体調に問題がないなら、辞める前に出してください。体調が崩れているなら、この順番は捨てていい。働けなくなるほうが損が大きい。
いま第二新卒の枠がどれくらいあるか、1年の職歴でどこまで出せるか。求人票を1枚ずつ読んでも分かりますが、まとめて聞く方法もあります。転職エージェントか就活エージェントに1社登録して、「1年の職歴で、いまどの枠に出せますか」と聞く。書類を1回見てもらえば、さっきの3つが埋まっているかも分かります。
無料で使えます。職業安定法32条の3で、有料職業紹介の手数料は原則として求人者(企業)から受けると決まっているからです。払っているのは採る側。僕も1人採るたびに払ってきました。
転職が決まって初めて報酬が出る構造なので、急かされることがあります。「辞める日はまだ決めていない。枠を知りたいだけ」と最初に言ってください。それで話を聞いてくれるところと、急かすところに分かれる。急かされたら断って構いません。
辞める前に聞く。ハローワークで雇用保険の通算を確かめて、エージェントに枠を聞いて、それから日付を決める。この順番です。
よくある質問
- 新卒1年で辞めると転職に不利ですか
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在籍年数そのもので落としてはいません。僕のところの中途の書類通過率は15%前後で、落ちた書類に共通していたのは、辞めた理由が書いていない・辞める前に動いた形跡がない・職務内容が役職名だけ、の3つでした。実務の境目は社会人経験3年で、1年はその手前に入ります。
- 1年で辞めると失業保険はもらえますか
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雇用保険法13条1項で、基本手当は離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることが条件です。被保険者期間は月で通算するので、在籍1年ちょうどでも届くとは限りません。退職日を伝える前に、ハローワークで通算を確かめてください。
- 1年で辞めるなら、いつ辞めるのがいいですか
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ハローワークで雇用保険の通算を確かめる、就業規則の申出時期を見る、在職のまま応募を始める、中途求人が厚くなる1〜3月・9〜10月・6〜7月に当てる。この順です。期間の定めのない雇用なら、民法627条1項で申入れの日から2週間で終了します。
- 自己都合で辞めると、給付制限は何か月ですか
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雇用保険法33条1項は「1か月以上3か月以内の間で公共職業安定所長の定める期間」。運用は2025年4月1日以降の離職から原則1か月で、5年間で3回以上の自己都合離職は3か月です。離職期間中や離職日前1年以内に自ら教育訓練を行った場合は解除されます。
次に読むもの
- 【手続きで分かる3つ】短期離職を履歴書に書かないとどうなるか | 試用期間,職歴欄の書き方も
- 【4人に1人が抜ける】第二新卒で大手は無理なのか | 枠が開く時期,書類の3点も
- 【厳しいのは書類だけ】第二新卒の転職はどこが厳しいのか | 通過率15%,年齢制限の条文も
この記事で確認した資料
- 新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)— 厚生労働省 令和7年10月24日公表。大学卒業者の3年以内離職率33.8%、事業所規模別(5人未満57.5%・1,000人以上27.0%) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html / 2026年9月12日確認
- 令和5年 若年者雇用実態調査(厚生労働省)— 初めて勤務した会社をやめた主な理由(労働時間・休日・休暇28.5%、人間関係26.4%、賃金21.8%、仕事が合わない21.7%/20〜24歳は31.0%・30.0%・27.8%・16.7%)、勤続1年未満は人間関係が最多で1年〜10年未満は労働時間が最多、若年正社員の転職希望31.2%(20〜24歳35.0%) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/4-21c-jyakunenkoyou-r05.html / 2026年9月12日確認
- 雇用保険法 13条1項・2項(基本手当の受給要件)、33条1項(給付制限)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/349AC0000000116 / 2026年9月12日確認
- 給付制限の運用 — 厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」 https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001293213.pdf / 2026年9月12日確認。原則1か月へ短縮、5年間で3回以上の自己都合離職は3か月、教育訓練を自ら行った場合は解除
- 民法 627条1項(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 / 2026年9月12日確認
- 職業安定法 32条の3(手数料は原則として求人者から)— e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141 / 2026年9月12日確認
- 労働施策総合推進法 9条(年齢にかかわりない均等な機会)、同施行規則 1条の3第1項3号イ(長期勤続によるキャリア形成を図る若年者等の募集。職業経験不問が条件)— https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132 / https://laws.e-gov.go.jp/law/341M50002000023 / 2026年9月12日確認
- 卒業後3年以内の既卒者の新卒枠応募 — 厚生労働省「卒業後3年以内の既卒者は、『新卒枠』での応募受付を!」(LL021102開若01)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000693889.pdf / 根拠法は青少年の雇用の促進等に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000098 / 2026年9月12日確認。原文は「既卒者が卒業後少なくとも3年間は応募できるように努めること」で努力義務です
- 公正な採用選考の基本(厚生労働省)— 把握すると就職差別につながるおそれのある事項 https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm / 2026年9月12日確認
- 実務の記述は僕が関わってきた採用1社のものです。会社によって異なります
